logo

  1. ホーム
  2. 「地方×はたらく」インタビュー 一覧
  3. 「敷居は低く、理想は高く」。宮崎の文化が元気になることが私の生きがいです

2018/02/28

「敷居は低く、理想は高く」。宮崎の文化が元気になることが私の生きがいです

宮崎県立美術館 館長 飛田洋さん



宮崎県立美術館 館長の飛田洋さん。「美術館で待っちょるよ〜!」と館長自ら両手を広げて陽気に呼びかけるCMは宮崎県内でも話題となり、美術館の固いイメージを覆すきっかけとなりました。

館内を歩き回って絵画を見つめる子どもに気さくに話しかけたり、「館長さん!」と声をかけられたり、作品と同じくらい飛田さん自身も美術館の人気者です。「敷居は低く、理想は高く」と宮崎や芸術文化の未来に思いを馳せ、美術の普及活動に力を入れる飛田さん。長年携わった「教育」への信念から繋がる今の思いを伺いました。


「お待ちしております。」ではなく「待っちょるよ!」



飛田さんが美術館の館長に就任したのは2016年。就任直後より事業所訪問や講演活動などで、美術館や学校向けの事業などのPRを積極的に行っています。昨夏には県内の学校100校以上を自ら訪問し、美術展の魅力を直に伝えてまわりました。

飛田さん「まずは宮崎県民の皆さんに美術をもっと気軽に楽しんでもらいたいという思いが強くあります。若い世代の心に染み込むような仕掛けをしていき、より多くの方に豊かな感動を感じてもらえるよう、難しいけれどチャレンジをしています。職員は“何をするか分からん困った館長がきた”と思われているのではないでしょうか(笑)」

散歩のついでやデートの待ち合わせなど、“美術館に行く”ということが日常になってほしい。誰でも来ていいんだよというメッセージを示すために“待っちょるよ〜!”と叫んでみたという飛田さん。その効果は抜群で、同時期に行なった「高校生以下の入場料全額免除」という試みも功を奏し、若者の来場数は一気に増えました。

飛田さん「入場料の全額免除は、決して“ただ”ではありません。入場料分の価値を若い方々の人生へのプレゼントとしたかったのです。ジャージ姿で連れ立って来て絵画を見ている中高生を見たら、やってよかったなって思いましたね。」


実利を求めるだけの教育でいいのか



宮崎県教育長や宮崎大宮高校の校長を歴任してきた飛田さん。今の精力的な活動の根底には、教育への強い信念があります。

飛田さん「教員時代に就職氷河期なども経験しました。そんななかで “実利を求めるだけの教育でいいのか”という想いを持ち続けていました。テストが終了したら、入試に合格したら勉強しない、そういう勉強しか指導できないなら私は教師失格であろうと思っていたんです。

思考し、理解し、表現し、分かち合う。学力をつける営みと芸術を創作し鑑賞する営みのプロセスは同じであると当時から考えていました。若くて感性豊かなうちに芸術に触れることが大切だと考え、大宮高校校長のときには学校の玄関や廊下にアート作品をかけるなど、校内を“絵と書のギャラリー”にしました。

今、館長として若者に向けて芸術文化の普及活動を行っているのは、当時から変わらない“教育への信念”が原動力となっているのかもしれません。」


母の視線から「でも・しか」教師に



若者育成や教育に人生をかけ情熱を燃やす飛田さんですが、意外にもきっかけは消極的な理由でした。

飛田さん「兄弟3人のうち、大学に出たのは私だけでした。同級生で大学進学したのは1割にも満たないような時代でしたが、祖父が父を説得してくれて進学できたんです。将来は研究者になり博士号をとるのが夢でした。

両親にその話をすると、反対はされなかったものの母が悲しい目で僕を見るんです。そのとき私は、長男だから弟たちや家族のために宮崎で働かなければならないと悟りました。教師に“でも”なるか。宮崎に帰るには先生“しか”ない。そんな消極的な“でもしか根性”で教師になったんです。」


夢を転換させるのに10年かかった



志半ばで教師になる決断をした飛田さん。夢を転換させるには10年の月日が必要だったと言います。

飛田さん「子どもたちとの出会いが私を変えてくれました。子どもたちと接する中で、いい教師にならねばと思い直しました。完全に夢を忘れるには10年かかりました。教育は教え育てると書きますが、実は子どもたちや保護者に教えられ育てられた人生でした。

20代の頃の教え子の同窓会に出席すると、半人前であった20代教員の自分とも再会します。成長した教え子に会えて嬉しい半面、この子たちのためになすべきことを全てやれただろうかと後悔する時間でもあります。だからこそ、教えたときだけが教師ではないぞという気持ちで、長生きして生徒たちの人生を最後まで見届け、エールを送り続けたいと思っています。

ときめきや感動、そして命の輝きを実感することが学ぶ意味、教える意味だと思いますが、それは美術館でも同じですね。」


文化は地方創生の大切なカギ



若者への芸術普及活動と併行して、飛田さんが注力しているのが移動美術館「旅する美術館」やアーティストが地域に出向く企画「ワクワクアート アーティストがやってきた」などの地域活動です。

飛田さん「どんなにいい活動をしても、いい作品があっても、県民に見て知って使っていただかなければ美術館の価値はゼロだと思っています。“宮崎市にある県有施設”ではなく、ワクワクドキドキしながら県内全域の皆様に広くアートを楽しんでいただきたい。それが色々なところに出向いている理由です。」

また、館内では宮崎出身の作家の作品展を行ったり、若手作家にギャラリーを貸出し発表の場を作るなど、宮崎の作家の後押しをする企画も行っています。

飛田さん「宮崎の宝を発掘したり、東京で活躍する宮崎のアーティストを紹介することで、宮崎から新しい時代をつくっている人がいるんだよということをもっと県民に知っていただきたいと思っています。

文化は地方創生の大切なカギ。文化力というのは地域間競争の大切なファクターだと思います。本県の地域文化を興し、次世代に繋げる仕掛けをして、文化の力で宮崎のみなさんに元気になってもらう。それが私の生きがいです。」


美術館は心のワンダーランド



飛田さんは、41年間の教育現場や教育行政で培った経験もふまえ、美術に大きな可能性を見出しています。

飛田さん「目に見えている作品はみんな一緒なのですが、その中からなにを感じ取れるか、自分なりの発想としてどう昇華させるか、どう人と共感したり協働できるか。そのプロセスこそが現代社会に求められる力、未来社会を生き抜ける力になるんじゃないかな思うんです。

さらに、宮崎も捨てたもんじゃない、宮崎はやっぱりいい街だと思うようなことを美術で成し遂げたいです。ワクワクアートもそうですが、宮崎だからできることもありますし、美術も宮崎も可能性に溢れているので、そんな“心のワンダーランド”づくりが美術館長としての楽しみです!」

人生は夢とロマンと好奇心。ラグビーの試合みたいに、チームワークでみんなでパスを回しながら、果敢にトライを繰り返し前へ進む人生を続けたいと語ってくれた飛田さん。2020年には宮崎で国民文化祭の開催も決まっており、美術を始めとした宮崎の文化振興に期待が高まります!


(Text:齋藤めぐみ)

飛田洋:新富町出身。鹿児島大学卒業。山之口中学校、高原畜産高校(高原高校)、宮崎西高校、小林高校で勤務。以後、宮崎県教育研修センター、宮崎県教育庁学校教育課・政策課、宮崎大宮高校の校長、教育次長などを経て、2012 年宮崎県教育委員会教育長に就任。2016年より現職。

インタークロスFacebookページ

「地方×はたらく」の最新インタビューはインタークロスのFacebookページで確認できます

最新のインタビュー

  1. 腕さえあればどこでも働ける

    小林市 食と農の魅力創生シェフ 地井潤さん

  2. 商工会議所の異端児として、誰もしたことのないことを切り開きたい

    宮崎商工会議所 専門経営指導員 杉田剛さん

  3. 「宮崎には何もない」と言うのをやめてみませんか?

    株式会社リブセンス 宮崎オフィスセンター長 遠藤正幸さん

  4. 僕を動かしたのは「宮崎には僕が必要」という自惚れと思い込み

    日南市マーケティング専門官 田鹿倫基さん

  5. ひでじビールは、延岡の名を世界に広めるためのツールの一つです

    宮崎ひでじビール株式会社代表取締役 永野時彦さん

  6. PCさえあればどこでも働けるという短絡的な見方は甘かった

    クラウドファンディングFAAVO 齋藤隆太さん

採用担当の方はこちら

インタークロスには宮崎で働きたい20〜30代の転職希望者が集まっています。

Mail Magazine宮崎の求人情報をGET!

トップに戻る