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2019/02/18

「冒険家×デザイナー」2つのスキルで、子どもと地域の未来をつくる

NPO法人「五ヶ瀬自然学校」 理事長 杉田英治さん



NPO法人「五ヶ瀬自然学校」理事長の杉田英治さん。五ヶ瀬町鞍岡の自然のなかで、子どもたちに「生きる力」を伝える自然学校の活動を中心として、さまざまな形で地域づくりに取り組んでいます。

山あいの小さな町でNPO法人を起ち上げ、長く運営を続けていく過程で、多くの課題に直面しながらも、フレキシブルな発想とフットワークの軽さで乗り越えてきた杉田さん。

その活動を支えているのは「“冒険家”と“グラフィックデザイナー”という、異なる2つのスキル」だと言います。理念だけでは成り立たないNPO法人を、現実的なビジネスモデルとして確立させることで、地域の未来へつなげていこうとするその横顔に迫りました。


「自然学校」は自分にピッタリくる



杉田さんは、生まれも育ちも栃木県。高校を卒業して上京し、グラフィックデザインを学んだ後、都内の企業へ就職しました。数年間グラフィックデザイナーとして勤務していましたが、より広くいろいろなことを体験したいという思いから、24歳のときに冒険へと旅立ちます。ユーコン川が流れるカナダ・アラスカ5500kmの道のりを、約1年半かけて自転車とカヌーで走破するという壮大な旅を成し遂げました。

その後結婚し、ご夫婦で北海道・釧路へ。カヌーガイド会社の経営に携わっていましたが、お子さまの誕生を機に、奥さまのご実家(熊本)に近い五ヶ瀬町へと移住してきました。

五ヶ瀬町でカヌーガイドやスキーインストラクターとして活躍するなか、とある研修会に参加したところ「自然学校」という取り組みに出会います。冒険家の故・植村直己さんが、かつて設立を目指して活動されたという話を聞いて「これだ!」とひらめきました。

杉田さん「自分も冒険家として、いろいろな経験をしてきました。そうした経験を、自然のなかで子どもたちに伝えていくっていうのは、まさに自分にピッタリくると感じたんですね。」


子どもが安心して過ごせる場所をつくりたい



そして平成17年3月、地域のつながりから賛同者を集めて、ついにNPO法人「五ヶ瀬自然学校」を設立。
事業としてまず最初に取り組んだのは、「放課後子ども教室」でした。

杉田さん「当時は、下校途中の子どもの誘拐・殺人といった事件が、全国各地で増加しはじめた時期。鞍岡は広い校区に小学校が一つしかなく、学校までの遠い道のりを子どもだけで歩かせることに、不安を持つ親が多くなっていました。またこの地域は学童保育もないので、家に帰った後は子どもたちだけで、親が仕事から戻るのを待つという家庭もあって。

ちょうど我が子が小学校入学を翌年に控えていたこともあり、自分も当事者として、放課後の子どもたちが安心して過ごせる場所が必要だと思ったんです。」


子ども自身が体験から学ぶ「生きる力」


▲手作りの温もりあふれる室内に、やわらかな光が差し込む

杉田さんが自然学校の拠点として選んだのは、かつて町役場の支所だった建物。支所がなくなって荒れた空き屋になっていたところを、町から無料で借り受けて自ら改修しました。
小学校にほど近い場所にあり、子どもたちは学校が終わると、そのまま「放課後子ども教室」へとやってきます。
教室での子どもたちは、宿題をしたり遊んだり、思い思いに過ごします。杉田さんが大切にしているのは、子ども自身が主体的に考え、行動すること。

杉田さん「保護者が介在しないところで、学年を越えて助け合ったり、自分たちで課題を解決したりしていく。子どもたちだけで自治社会をつくるのが大事なんです。そのなかで、子ども自身がさまざまな体験を重ねていくことで、『生きる力』を学んでいくんですね。」


小さな需要を掘り起こして組み合わせる



「放課後子ども教室」は、もともと文部科学省が推進している事業制度の一つ。文科省から委託をうけて教室を運営するという形のため、人件費を含む運営費用は、すべて国や自治体からの助成金でまかなわれます。杉田さんは、この制度を利用することで、事業スタート時の負担を少なく抑えました。

杉田さん「助成金をうけて、とりあえず教室は開設できました。でも、それだけでいいというわけではなく、他にも何かできる仕事がないかと考えました。スタッフを抱えてNPOを運営していく上で、仕事や収入をどうするかというのはもっとも重要な課題なんです。」

とは言え、過疎が進む小さな町に、まとまった仕事はなかなかありません。
そこで杉田さんは、地域ならではの小さな需要を一つ一つ掘り起こして、それらを組み合わせていくことにしました。
はじめは町内のレジャー施設を活用して、サマーキャンプやスキー教室などといった、有料の体験教室から。人手不足の農家さんのお手伝いをしたり、自分たちで畑を作ったりもしました。



そうしたなか、杉田さんは体験教室で利用している町営キャンプ場の管理を、事業として引き受けることを町へ提案します。ただ、当時のキャンプ場は赤字続きで、町から管理費をもらうのは難しい状況でした。

「だから管理は無料で引き受け、代わりに売上げをすべてもらうことにしたんです。」

と、いたずらっぽい笑みを浮かべる杉田さん。

グラフィックデザイナーとして広告業界で働いていた経験を活かし、キャンプ場の経営改善のためにさまざまなアイデアを模索し、実践していきました。その結果、海外からの観光客を中心に予約が増えはじめ、みごと黒字に立て直すことに成功。現在もキャンプ場の売上げは順調に伸びており、NPO運営のための重要な収入源となっているだけでなく、町の財政支出の削減にも貢献しています。


当事者としての地域づくり


▲農家と共同で開発したブランド米「負け知らず」

そんな杉田さんが、いま新たに力を入れているのは「お米」。
じつは、「五ヶ瀬自然学校」がある鞍岡は、かつて山形県の庄内・新潟県の魚沼と並ぶと言われたこともある米どころなのだそうです。

その鞍岡が誇る美味しいお米を、地域伝統の「左近太郎(水車を利用した臼と杵の精米機)」で手間ひまかけて精米し、付加価値を高めてブランド化。地元ゆかりの戦国武将で、無敗と言われた甲斐宗運にちなみ「負け知らず」と名づけて、積極的なプロモーション活動を展開しています。

※「負け知らず」CM動画>>

杉田さん「お米を作っても儲からないという地域の農家さんの現状をくつがえして、米づくりを“きちんと収入が得られる仕事”にしていくことが目的。仕事があれば人も集まりやすくなり、地域の活性化につながります。
子どもたちの将来の選択肢にも、農家が入るようになっていけばいいなと思っています。」



次々といろいろなことに取り組んでいる杉田さんですが、一貫して大切にしているのは、そこに暮らす当事者として地域と向き合うこと。

杉田さん「ここで子育てをしたことで、当事者としての意識は、より強くなったと思います。ここで育つ子どもたちが大人になったとき、生きていく場所としてこの五ヶ瀬を選べるようにしたいですね。

子どもたちの未来のために、地域を盛り立てていくことも『五ヶ瀬自然学校』の大事な役割。子どもたちにとって、魅力的で愛すべき故郷となるように、地域をつくっていきたいです。」


杉田英治:栃木県出身。専門学校卒業後、東京でグラフィックデザイナーとして勤務していたが、冒険家としてカナダ・アラスカへ旅立ち、自転車とカヌーで5500kmを走破。カヌーガイド、スキーインストラクターの経歴を経て平成17年、NPO法人「五ヶ瀬自然学校」を設立。自身の経験を活かして、地域の子どもたちに「生きる力」を伝える。地元鞍岡の農家と共同で開発したブランド米「負け知らず」のCM動画では、自ら戦国武将姿で出演するなど、精力的に地域づくりに取り組んでいる。

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