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福祉×クリエイティブとWebアクセシビリティをテーマにしたトークイベント「置いてけぼりを作らないデザイン」が開催されました

2026年2月11日(水)にインタークロスにて「みんなのデザイン研究所 #04『置いてけぼりを作らないデザイン』」が開催されました。
「みんなのデザイン研究所」は、みんなの学校が開催するセミナー/トークイベントシリーズです。
今回は5回目の開催となりました。

今回登壇したのは、宮崎県三股町のコミュニティ「よる学校」Webサイトのリニューアルに関わった3名のクリエイターです。

グラフィックデザイナー/アートディレクターの平野由記さんは、子ども・福祉・文化・芸術分野を中心にデザイン活動をおこない、社会とデザインの関係を実践の中で探求しています。
ウェブアクセシビリティスペシャリスト/コーダーのあべゆりさん は、「ウェブアクセシビリティの種を蒔く」をモットーに、誰もが使いやすいWebのあり方を伝える活動を続けています。
そしてWebデザイナー/アートディレクターの黒葛原道さんは、Web制作を軸にディレクションやコンテンツ設計まで幅広く手がけ、「作って終わりにしないWeb制作」をテーマに活動しています。
それぞれ異なる立場から制作に関わった3名が、「誰ひとり取り残さない」という視点をどのように形にしていったのか。その制作の背景と考え方を、実例とともに共有する場となりました。

今回のイベントのテーマとなっている「よる学校」は、三股町社会福祉協議会が立ち上げたコミュニティデザインラボ(通称:コミュラボ)の取り組みから生まれました。
コミュラボは、地域で生まれる困りごとを制度や支援の枠組みだけで解決するのではなく、地域の人や団体がそれぞれの得意なことを持ち寄り、対話を重ねながらプロジェクトとして形にしていく活動です。課題を「支援の対象」として切り分けるのではなく、地域の中に関係性をつくることで解決していこうという考え方が根底にあります。
その中で生まれた「よる学校」は、福祉を前面に出さない場づくりを大切にしてきました。ボードゲームやタロット、編み物など、“好きなこと”をきっかけに人が集まり、自然に関わりが生まれる場所です。
「助ける/助けられる」という関係ではなく、まずは同じ時間を楽しむことから始まる関係。
この発想そのものが、今回のテーマである「置いてけぼりを作らないデザイン」の出発点となっていました。

まずは平野さんから、よる学校の立ち上げ当初の活動内容がどのようなものだったかの説明がありました。
活動の全体像が明確に言語化されていたわけではなかったこと、ロゴやキャラクターといったビジュアルが先に生まれ、活動の象徴として機能していったこと、そのキャラクターがSNSでの発信やコミュニケーションの中心となり、人を引き寄せる役割を果たしたことなどが語られました。


続いて黒葛原さんからは、よる学校のWebサイトリニューアルにおいて重視した考え方について話がありました。
当初はSNSでの情報発信が中心だったことから、初めてよる学校を知った人にとって活動の全体像が伝わりにくいという課題があったこと、そのためWebサイトでは単発の情報を発信する場ではなく、活動の背景や関わる人の情報を整理し、いつアクセスしても理解できる「ストック」としての役割を持たせたそうです。
また、アクセシビリティは色や文字サイズといった表面的な調整だけではなく、情報にたどり着ける構造そのものに関わるものであることにも触れ、誰かにとって分かりにくい設計は、それだけで「置いてけぼり」を生んでしまう可能性があるという視点が共有されました。


続いてあべゆりさんからは、Webアクセシビリティの基本的な考え方について説明がありました。
アクセシビリティとは特定の人のための配慮ではなく、「誰でも使える状態」を目指すものであること、ユーザビリティ(使いやすさ)よりも前に、「そもそも情報にたどり着けるか」「操作できるか」といった前提を整える考え方であることが共有されました。
セッションでは、アニメーションの制御やキーボード操作への対応、文字サイズ変更への配慮など、よる学校のサイトを例に挙げながら解説がおこなわれ、見る人の環境や状況によって体験が大きく変わることが紹介されました。
アクセシビリティは「特別な誰か」のためではなく、誰にとっても起こりうる状況に備えるための考え方であるという点が印象的に語られました。


また黒葛原さんからは、実際の制作現場で取り入れられる具体例として、AdobeのツールやOS設定を使った見え方のチェック方法も紹介されました。
Adobe Colorを使ったコントラスト比の確認やIllustrator/Photoshopの表示機能を活用した色覚特性の見え方の確認、さらにOS側のカラーフィルタ(グレースケール等)によるチェックなど、特別な環境を用意しなくても実践できる方法が共有されました。
アクセシビリティを制約としてではなく、より多くの人に届けるための前提として捉え直すきっかけとなり、制作側の不安や難しさをやわらげる視点として印象に残る内容でした。

セッションの終盤では、平野さんから自身が社会課題や福祉に関心を持つようになった原体験についても語られました。2010年、宮崎で口蹄疫が発生した際、福岡で活動していたクリエイターたちによるチャリティバッジ制作に参加した経験があったといいます。「何か役に立ちたい」という思いで関わったものの、SNSである反応を目にしたことをきっかけに、「自分は状況を十分に理解しないままデザインしていたのではないか?」と考えさせられたそうです。
その経験は、「デザインとは何のためにあるのか」という問いを持ち続けるきっかけとなり、現在の活動につながっていることが語られました。

この話を受けて黒葛原さんからは、自身が地域の班長として回覧板を回す立場になった経験について触れ、本来は『アクセシビリティ』や『ユーザビリティ』という言葉の枠組みにとらわれすぎる必要はなく、相手に合わせて伝え方を変えるという姿勢が必要なのではないかという考えが示されました。
見た目の良さを優先するのではなく、「相手にきちんと伝わるか」を考えること。その姿勢はマーケティングやデザインの考え方とも通じるものであり、日常の中にもアクセシビリティの考え方は存在しているのではないかという視点が共有されました。

あべゆりさんからは、誰かの優しさだけに依存しない仕組みづくりの必要性について補足がありました。Webアクセシビリティというものは、誰かが特別に配慮しなくても情報にたどり着ける状態をつくることに意味があり、優しさがなくても成立する設計を目指す考え方であると説明がされました。
情報の届け方は一つではなく、回覧板のような地域の仕組みも含めて、誰に何を届けたいのかによって手段を選ぶ必要があることにも触れ、アクセシビリティにはさまざまなアプローチが存在することが示されました。

「置いてけぼりを作らない」という言葉は、Web制作に限らず、これからのものづくりや場づくりを考えるうえでの大切なキーワードであることを感じられた時間となりました。

今後もインタークロスでは、デザインやクリエイティブを通して、多様な人が関わり合える場の情報を発信していきます。

イベントの情報とコミュニティのサイトは以下のページをご覧ください。
みんなのデザイン研究所イベントページ
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